この記事では、企業経営者向けに節税目的の生命保険をお勧めしない理由5つについて解説します。節税保険は貯蓄型の生命保険で解約払戻金があるタイプの保険商品の事です。「利益が出るから節税」「将来の退職金のため積立」等と保険会社や保険代理店から提案されませんか?率直に言って節税にならないし積立にもなりません。この記事を読むことでご理解いただき企業経営に役立てていただけると幸いです。
目次
お勧めしない理由5選
★キャッシュフローを悪化させる
★保障額が小さい
★保険料の全額が費用になるわけではない
★目の前の節税だけで税金の繰り延べに過ぎない
★そもそも貯蓄になっていない
キャッシュフローを悪化させる
節税・貯蓄目的の生命保険は掛捨の生命保険と比べ保険料が高いです
なおかつ流動性が悪い
貯金の代わりと言われるかもしれませんが緊急事態や困窮時に解約すると減ってる可能性大です
貯蓄型保険は数十年後の一番いい時で単純な戻り約8割です
短期間で解約すると大きく元本割れです
流動性が悪いですよね
保険金額と被保険者の年齢・性別・健康状態で保険料は変わりますが、月数万円・数十万円なんか簡単にいきます
資金力が小さい中小・小規模事業者のキャッシュフローを悪くします
そういった中で「お付き合い」「掛捨ては嫌」という理由で高い保険料払って契約している企業を多数見ます
中小企業・小規模事業者で資金繰りが悪く銀行の借金が多い企業のほとんどが節税・貯蓄目的の生命保険を契約し毎月数十万円の保険料を払ってます
契約理由を聞くと「節税」「将来の退職金」「お付き合い」「保障」と答えます
「お付き合い」が入っている時点で貯蓄型保険の仕組みは分かっていません
「理解して契約」ならまだ良いのですが、あまり考えず契約”させられている”ケースが多いです
保障額が小さい
![](https://datsusarunner.com/wp-content/uploads/2022/12/mistake-1966448_1920.jpg)
保障の必要性を理解し契約している方もいます
正しいのですが保障額が足りないケースがほとんどです
中小企業・小規模事業者の場合、必要な保障額で保険料を出すと過大な保険料になります
そのため保障額を抑えて保険料を減額し契約しているのです
生命保険会社や代理店も貯蓄型を勧めてきます
「掛捨てもったいない」
「節税」
「退職金」
この3つのワードを使います
このワードに経営者は弱いです
掛捨てに比べ保険料が高く成約時のインセンティブが高いから貯蓄型を勧めてきます
いまいちど目的を明確にしましょう
保険は被保険者(経営者・代表者)に万が一が起きた場合に備え加入するリスク対策です
・企業を存続させるため
・残された人に負の遺産を残さないため
負債や運転資金等を考慮し算定した保障額から保険料を出すと
掛捨なら毎月数千円~数万円で済むものが、貯蓄型だと数十万円します
保険は、起きる可能性は低いけど、起こったら困る事態に備え加入しましょう
企業のリスク対策として数千円~数万円の掛捨てを必要経費と考えないのはナンセンスです
保険料の全額が費用になるわけではない
たまに保険料全部が企業の「経費」「所得控除」と勘違いしている人がいます
それは違います
法人であれば払うもの全て「会社の経費」としたいですよね
残念ですが現行の貯蓄型生命保険の経費は払った額の4割くらいしか費用になりません
残り6割は資産に計上されます
そこまで節税の効果ないです
※4:6の割合だけでは無いのですが、現在の主流商品です
全額費用にできる商品もありますが、戻りが良い時で約5割しか戻ってきません
個人事業主であれば保険料控除という言葉に引っ掛かり割高な保険に加入しがちです
個人事業の場合は生命保険は経費になりません
生命保険料控除という形で所得控除となります
例えば年間に保険料を50万円払ったとして、所得控除4万円だけです
どう思います?僕はもったいないと思います
戻ってくる金額も良い時で元本の8割くらいです
リスク対策と貯蓄を分ければ、他にまだマシな手段あります
目の前の節税だけで税金の繰り延べに過ぎない
支払う保険料全てが経費ではなく、利益を大きく減らすわけではないと分かりました
少しは利益を減らす効果があり税金も減りますが微々たるものです
そしていつの日か解約した時に払戻し金は収益として計上されます
そのため解約時は利益が増加し、その分納税額は増えます
保険で経費を作って節税した分は、いつか解約した時に払う事になります
つまり保険の節税は目の前の税金を未来に繰り延べているだけ
いつかは払うのです
すると生命保険会社や代理店から
「解約した時に退職金等の大きな費用をぶつけなさい」
という助言を受けるかもしれません
確かにそれがベストですが数十年後の事を決めておけますか?
今のご時世5年先もわかりません
保険の払戻し金額はピーク(一番戻る金額が大きい時)があります
ピークを過ぎると戻りの額はだんだんと下がっていきます
ピークのタイミングで退職できますか?
繰り返しますが今のご時世5年先も読めません
未来への投資に保険は適切と言えるでしょうか?
そもそも貯蓄になっていない
![](https://datsusarunner.com/wp-content/uploads/2022/12/portrayal-89189_1920.jpg)
ここまで読んでいただけたらお気づきですよね
貯蓄型保険は貯蓄になっていません
「節税ありきで貯蓄です」というのが販売する側の最終文句です
節税は目の前の一時的なものにすぎず、後々返ってきます
僕は会計事務所に所属し保険募集人もしています
会計事務所はたいてい保険業もしてます
顧客の損益やキャッシュフローを分かっているので提案がしやすいのです
掛捨てより貯蓄型保険を制約した方がインセンティブが大きいです
つまり
お客様が払う保険料は「保険会社」「代理店」への手数料部分が大きいのです
保険は掛捨て
生命保険自体は否定しません
リスク対策に生命保険は必要です
期間や保障額を考え保険料負担の少ない掛捨てにしましょう
貯蓄型はキャッシュフローを悪化させ、契約者の資産を減らすだけなので勧めません
【例】利益の使い道
利益を抑えたい場合どうするか?
まず前提として、利益を残して納税しないとお金は貯まらず減っていきます
税金を減らす目的で赤字にしてはいけません
①業務効率につながるツールやアイテムに投資
2022年12月時点で青色申告の中小・小規模事業者であれば、単価30万円未満の備品等は累計300万円(単価30万円未満×個数)未満まで経費にできます
②デジタルトランスフォーメーションへの投資
ITによる革新的な業務改善の取り組み
③倒産防止共済(経営者の退職金原資)や中小企業退職金共済(従業員の退職金原資)
④人事評価制度の導入投資
終身雇用・年功序列の脱却
まとめ
【節税・貯蓄目的の生命保険をお勧めしない理由】
★キャッシュフローを悪化させる
★保障額が小さい
★保険料の全額が費用になるわけではない
★目の前の節税だけで税金の繰り延べに過ぎない
★そもそも貯蓄になっていない
【代わりに】
★保険は掛捨てで充分
★IT投資で業務効率化
★人事評価制度導入で終身雇用・年功序列の脱却
僕個人も過去に付き合いとかで不要な保険に入ってました
今は全て解約し、浮いたお金を事業や家族のために使ってます
「お付き合い」で保険は入るものではありません!
ではまた🌸